レビー小体型認知症患者は、
パーキンソン症状から始まれば、パーキンソン病、
物忘れから目立ち始めれば、アルツハイマー病、
うつ症状が強い方は、うつ病と診断される例が、非常に多いです。
介護家族の方々のお話を伺って、最初からレビーと診断された例は、希です。
では、どうすればレビーと見抜くことができるのでしょう?
レビー、アルツハイマー病、両方の介護経験を持つ方に印象を聞いてみました。
●アルツハイマー病の場合は、忘れた記憶も消えるので、記憶力低下に無自覚。
指摘されると「そんなことはない!」と堂々と言う。
●レビーは、自分が忘れてミスをしたことを覚えており、苦にもしている。
指摘されると「え?そう?・・忘れたのかも知れない」と暗い顔で言う。
(私の母も初期から「バカになった」と言い、要介護4の今も「どんどんボケていくのがわかるから、時々すごく恐くなる」と言います。)
●アルツハイマー病の場合は、道に迷うと、自力で帰宅できない。
●レビーは、せん妄(意識障害)時に迷うが、意識が元に戻れば帰宅できる。
一見同じような「物忘れ」「徘徊」にも違いがあります。
(ただし合併型も多く、合併すると症状も混ざり複雑に。→参考記事)
また認知症薬のアリセプトを処方(または増量)された時、怒りっぽくなる、体が動かなくなるなど急に悪化したと感じた時は、レビーの薬剤過敏性の可能性があります。
「悪化した?では量を倍に」という医師が少なからず居ますからレビーの可能性がないか、医師とよく話し合って下さい。(参考記事)
では、レビーの発見者である小坂憲司医師の「第二の認知症 増えるレビー小体型認知症の今」という本を一緒に見てみましょう。
1. 認知障害 (初期には比較的軽い)
初期には、知的能力があまり冒されていない人も少なくない。
記憶力や理解力などに著しい低下がみられないため(略)認知症のテスト(長谷川式簡易知能評価スケール)をしてみても認知症と判定されにくい場合がある。(注1)
レビー小体型の人の海馬(記憶を司る脳の部位)は、アルツハイマー型に比べて萎縮が少なく、健康な人と同程度といっていい例もある。(注2)
(P.76〜79)
注1 byしば:レビーの場合は注意力が落ち、計算を間違うようになる(計算能力の低下ではない)とレビーの専門医から直接伺いました。他の医師も同様に書いています。(参考記事→「認知症の種類による長谷川式スケースの答え方」)
注2 byしば:脳の萎縮は、病気の進行にともない変わってくるようです。参考記事→「レビー小体型とアルツハイマー型の脳の類似」)
(レビーでは、ずっと病識—病気の自覚—、家族の顔や名前、理解力、思いやりの心などが残ると介護家族だった方から聞いています。)
2. うつ (レビー小体型認知症を疑え)
初期には、うつ症状が顕著にみられる。
おおよそ40%の人にこの症状が現われるとされる。
(小阪憲司・羽田野政治著「レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック」P.78では、約7割に出るとあり、その割合はアルツハイマー型の2倍以上と書かれている。)
レビー小体型の人は、十分な病識(病気である自覚)をもっていることが多く、悩みやすい。
また、まじめかつ几帳面な性格の持ち主で、ささいなことを深刻に受け止める傾向にある。そのためにうつ症状をきたしやすいという面がある。
一般的なうつ病は、気分の落ち込み、悲観的思考、自責感、自殺願望などが中心だが、レビー小体型に多くみられるのは、アパシー(無気力・無関心・感情の鈍麻)や不安感・焦燥感・心気症状など。
(「レビー小体型認知症の介護がわかるガイドブック」P.78
「具体的には、やる気が出ない、興味関心が減る、食事をとらない、部屋に引きこもる等」)
心気的なものではなく、実際に不眠やだるさ、食欲不振などを伴うことも多い。
レビー小体型認知症と診断を受ける以前から長期間にわたってうつ症状がみられる人が多数存在する。
薬物治療が効果を上げず、長引く遷延性うつ病(難治性うつ病)だとされている高齢者の中には、レビー小体型認知症の人が数多く含まれているというのが、専門医の間ではもっぱら定説になっている。(P.86〜87)
*小阪憲司・池田学共著「レビー小体型認知症の臨床」(P.97)にもレビーの発症を予測できる例として
「難治性うつで少し物忘れも始まってきた方」
「パーキンソン病で少しの抗パーキンソン薬ですぐ幻覚・妄想が出てしまう方」
「幻覚、妄想が出ており、特に幻視が非常に強い方」と池田氏が発言。
私(しば)の母の場合は、急激に悪化する前の数年感、異常な心配性(不安と焦燥感)が目立ちました。私が家族と帰省する時、「献立が考えられない。段取りができない。滞在中の全ての献立と食材をリストにして送って欲しい」と繰り返し言ってきました。
「え?」と一瞬驚く奇妙な発言、「そんなこと言う人じゃなかったのに」という違和感が始まりだったと後で気付く家族は多いです。