リアルな幻視(幻覚)は、レビー特有の症状です。
アルツハイマー病等でも見えますが、レビーの方ほど詳細に描写できません。
「他の認知症では、虫の幻視は聞かない」という印象を語る医師もいます。
あらゆる所にあらゆるものが現われますが、私たちの「幻覚」のイメージとは、まったく違います。
透けない、くっきり鮮明、カラー、立体、質感もそのまま、リアルに動き回る。
つまり本物と区別のつかない、「現実」として見えるとレビーの方は語ります。
そのため本人は本物と信じ、行動を起こしたりします。(接客/退治する等)
妄想(本人は現実と確信している話)に発展する場合もあります。
しかし「○○がいる」と言うのは、ボケているのではなく、本人には現実そのものとして確かに見えているのです。
頭ごなしの否定は、混乱、悲しみ、孤独感、猜疑心を生むため避けましょう。
落ち着いて「幻視だ」と説明すると、理解、納得する場合も多々あります。
「一緒に触ってみよう」と手を伸ばすと消えることが多いです。
幻視は、医師に気付かれないことも多く、診断を難しくしています。
ごく初期には、本人も家族も目の錯覚と思っています。
目の前で消えたり、『こんな所にこんなものがいることは現実的でない』と考えて、自分で幻視だと気付く方もいます。
その場合は「異常者」と思われることを怖れて隠す場合があります。
医師に「何か見えますか?」と聞かれても、否定したり、幻視を訴えないことが多いので、家族の観察と報告は重要です。
家族は、最初、妙な動きに気付くことがあります。
見えない何かをつまむ、つぶす、払う、引っ張る、さわる等。
見えない何かに話し掛ける。(怒鳴る場合も)
ブツブツ独り言を言っているように見えたりもします。
「そういえば、普段はしっかりしているのに、急に変なことを言うことがあった」と語る家族が多いです。
泥棒、幽霊、小人、ヘビ、兵隊等が、天井と壁の隙間から出てくる。
駐車した車の中に人や子供が乗っている。
ご飯に虫がはっている等は、複数の方から聞いた例です。
可愛い子供や犬猫を見る場合もあれば、恐ろしい幻視に怯えたり、興奮して戦おうとする場合もあります。
本人が幻視に苦しめられていない限り、無理に薬で消そうとしない方が良いと言う医師が多いです。副作用で別の症状が悪化することがよくあるからです。
幻覚として、他に幻聴や体感幻覚(例:「触れられている」「痛い」「熱い」「虫が付いている」「腕の中でミミズが動く」→出典)が起こる場合もあります。
むずむず脚症候群(レストレスレッグズ症候群)と診断された方もいます。
では、小阪憲司著 「第二の認知症 増えるレビー小体型認知症の今」(P.66〜74)に書かれた内容をいっしょに見ていきましょう。
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幻視は、レビー小体型認知症患者の80%に見られる。
(2割の患者に幻視は見えない。)
見えるのは、人・子供・小動物・虫が主だが、その理由は、解明されていない。
幻視は、実物と同じようにくっきりとカラーで見え、リアルに動いたりする。
突然現われ、数分から数十分続くことが多い。
頻度は高くないが、静物や景色などが見えることもある。
(例:部屋に川が流れている。花が咲いている。指先から糸が出てくる。)
幻視は、暗がりや影がある所で生じやすく、夕方から夜間に増す。
嫉妬妄想は、レビーに特に頻度が高い。(「寝室に浮気相手がいる」等)
レビー小体型認知症には、幻視の他にも視覚認知障害がある場合がまれではない。
<視覚認知障害の種類とその例>
1. 錯視(見間違い)ゴミが虫に、布団が動物に、壁の掛コートが人に見える。
2. 変形視 地面が波打つ。家が傾く。部屋がぐにゃぐにゃと歪む。
3. 実体的意識性 人の気配を感じる。人が通り過ぎた気がする。
4. 幻の同居人 自宅に誰か知らない人が住みついていると感じている。
5. カプグラ症候群(替え玉妄想)家族の外見は同じで中身が別人と信じる。
6. 重複記憶錯誤 同じ顔の妻が2人、自宅がもう1軒、車が4台ある等。
7. ナータリング症候群 死んだことを知っていて生存していると思い込む。
幻覚として他に幻聴もまれではない。
追記;ぼやけて見える幻視などもある。→参考記事(コメント欄も)
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